タイの治安。日本人が巻き込まれる犯罪、タイ特有の事情まで。

タイの治安 
flickr

 

タイの治安

自分がタイへの移住や旅行について話すとき、多くの人は「タイって治安はどうなの?」という質問をぶつけてくる。元々日本よりも治安がいい国は世界にはほとんどないと言っても過言ではないため、当たり前の話ではあるが「日本よりは悪い」と答える。

 

具体的には、タイだと窃盗を初めとする軽犯罪が多い。また、生命や肉体に被害を及ぼした事件として、殺人についてはここ10年間を見ると年間3000~6000件発生している(情報元:タイ国統計局)。日本の殺人件数は1000件程度、人口がタイが7000万人、日本が1億3000万人程度なので、人口当たりでみるとおよそ9倍である。

ただ、これでも他の国に比べて特別治安が悪いわけではない。日本が良すぎるだけで、地域にもよるが欧米よりも治安は良く、海外旅行なら十分安心して行けるレベルと言えるだろう。

 

タイ観光客が巻き込まれる犯罪

在タイ日本国大使館は定期的にタイにおける犯罪情報も公開しているが、ここではタイでよくある犯罪で、体感的にも自分の周囲に起こっていると感じる犯罪を中心に紹介していこうと思う。主に日本人が巻き込まれ易いものである。

見せ金詐欺

中東系犯罪グループが日本人をターゲットに絞り行なっている窃盗である。中東系のグループは海外に緊密なネットワークを形成していて、タイでも様々な情報交換を行っている。その中で、上手くいった連中が「日本人を狙った窃盗は儲かる」という情報を出した事から流行したと言われている。

 

主に行われる場所は、日本人旅行者も多いバンコクのスクンビット界隈で、「日本人ですか?」等と声をかけ、「I love Japan!」等と褒めて安心させた後に、握手を求めてきたりする。

そこですかさず「日本へ行きたいんだ」「日本円を見せてくれないか?」など、理由は違えど、とにかく「お金を見せてほしい」と頼んでくる。財布を出し、お金を見せたところでいつの間にか紙幣を抜き取るという方法である。

 

盗まれないためにはとにかく財布を出さないという事が大事だ。また、盗まれた後、紙幣が無くなっている事に気づいてそれを指摘しても知らんフリをするし、突然英語が理解できないフリをしだし会話が成立しなくなる。場合によっては、「紙幣を盗んだだろ」という主張に対して、逆ギレされる事もあるらしい。

 

それでも盗まれた事に気づいたらとにかく強い口調で主張する必要があり、ダメなら警察を呼ぶ素振りを見せたり(実際に呼んでもなんら問題はない)、スマホ等で相手の顔写真を撮るなどすれば堪忍することもある。ただ、基本的には盗られたら帰って来ないものだと思って、こういう状況に遭遇したら警戒した方が良いだろう。

 

いかさま賭博

旅行中「日本人か?」「よく来たねー」などと声をかけてくるタイ人は多い。ただ、その中でも初対面で家に招待する場合は、付いて行かないほうが良いのは言うまでもない。

これもスクンビット界隈の両替所の近くなどで、「日本へ旅行に行きたいと思ってるからいろいろ聞かせてくれ」等々、様々な理由をつけて家に誘ってくる。現地のタイ人が多い。

 

家につくと、いろいろと中を紹介されて、そのうちに人がどんどん集まってくる。知らぬ間に賭けのカードゲームが始まり、最初は数十バーツレベルで勝っていくが、額が大きくなると負けが膨らむようになり、しまいには数千、数万バーツが必要だと支払いを強要される。

 

もちろん、グループでイカサマされているため負けるのだが、最初に同意の上で始まりいくらかの金銭は貰っているため申し訳なくて支払ってしまう人が多いようだ。古い手法と思われがちで騙されるはずはないと思っている人も、家に行ったら最後、普通の日本人では賭けが始まると空気に流され、逆らえなくなると思ったほうが良い。

当たり前の話ではあるが、それ以外の犯罪に巻き込まれる危険性もある。初対面の見ず知らずの人の家にはついて行かないようにしよう。

 

抱きつきスリ

その名前の通り、いきなり抱きついてきてその間に財布を盗むという南米でもよくある古典的な手法である。場所はやはり立ちんぼの多いスクンビット界隈、特にソイカウボーイやナナプラザ近辺でお酒を飲んでほろ酔いの人か気の弱そうな相手を狙ってくる。

こうした抱きつきスリは集団で行われる事が多く、レディーボーイ(オカマ)が多い。手口は簡単で獲物を定め、集団で抱きついてくる。さすがに男とだけあってものすごい力で締め付けられ、全身に感覚があるので、ポケットから財布が抜かれても全く気づかないのである。財布が無いと気づいた時にはもう彼女ら(彼ら)はどこかへ消えているだろう。

 

ちなみに、カードが盗まれた場合は不正使用もされる恐れがあるのでカードのサインはアルファベットではなく、漢字やひらがな、カタカナでの記載にしておくと防止につながる。なぜなら、タイ人はアルファベットは書けてもこうした漢字等は書けないので、不正使用の際も外見が明らかに日本人ではないと、店の店員に疑われるためカードを使わない傾向があるからだ。

 

このスリの防止策としては、立ちんぼに微笑まれてもむやみに微笑み返さない事、また、明らかに酔っ払いのような振る舞いや千鳥足ではいいターゲットになるので日本と違いタイでは飲み過ぎには注意したほうが良い。こうした集団と出くわすことはバンコクに限らず、パタヤでも結構あるので、緊張感を持ちつつ目を合わせないで正々堂々と通り過ぎるのと、抱きつかれそうになったら強めの口調で拒否する事が大事だ。

 

レディーボーイによる外国人への犯罪としては、暴行事件や昏酔強盗(ホテルで睡眠薬を飲ませて、寝ている間に金品を盗む)など、窃盗以外の事件も多いので、自己責任とはいえ十分に注意しなければならないだろう。

 

非常に稀だったり、今ではほとんど無いような犯罪も記載されているが、更に気になる人は在タイ日本国大使館が発表しているタイの安全情報(犯罪手口いろいろ)のページも参考に。

現金を盗まれたり、落として一文無しになれば楽しいはずの旅行も台無しである。こうしたトラブルが起こった時、冷静に対処するためにもパスポートやお金を海外で紛失した際の対処法の記事は必ず読んでおいてほしい。

 

タイ特有の治安情報

日本に無い(もしくは少ない)特有の犯罪、事件を語るキーワードとしては、

▶ イスラム過激派によるテロ
▶ ギャング(マフィア)
▶ タクシン派と反タクシン派のデモ
の3つがあげられる。

 

観光客の多い国ではスリなど、窃盗が多くなるのはどこの国も一緒である。ただ、タイには特有の事情があり、それが治安に大きく影響を及ぼしている。

下記ではそれらを紹介して行く。

 

タイでのイスラム過激派によるテロ

バンコクでの中国ウイグル族(イスラム教徒)によるテロ

日本でも報道がなされたが、2015年8月17日夜にバンコクでテロ事件が発生した。死者は20人にも及び、日本人1人も障害を残す重傷を負った。このテロで捕まった犯人はウイグル族の中国人やトルコ人でイスラム教徒であった。

詳しくは下記記事を参考に。

Suspect-of-Bangkok-terrorismタイ・バンコクのテロに関する情報。テロを起こした犯人グループとは?
今回のテロ事件で大きく拡散したエラワン廟での爆発テロ実行犯とされる男の似顔絵 バンコクにおけるテロエラワン廟での爆発テロ2015年8月17日夜、タイの首都バンコクのラチャプラソン交差点・エラワ...

 

タイ南部におけるテロ

また、情報が制限され日本ではあまり知られていないことであるが、タイでもイスラム過激派によるテロがある。その死者は2004年から現在までに6000人にも及んでいて決して少なくはない。

これは独立運動が原因である。

タイの深南部三県の1つであるパッタニー県とその周辺は14世紀から19世紀にかけてパタニ王国という半独立の王朝があった。しかし、20世紀初頭タイが大英帝国との間に結んだバンコク条約によりパタニ領のタイ領化が国際的に承認され、タイへと編入される事になる。イスラム教徒であるマレー系民族が多く住みながらも、タイの一部となったのだ。

Patani region
バンコクと深南部三県(パッターニー県・ヤラー県・ナラーティワート県)の場所。マレーシアとの国境近くにある。

 

タイの一部となった事で、それに反発したマレー系住民(イスラム教徒)による独立運動が盛んになり、2004年には多くの死者を出す武力衝突も起こっている。

タイ南部 パッタニー県 テロ
民間人が射殺されその後焼かれるという痛ましい事件の写真(2012年9月) http://jp.reuters.com/news/pictures/topnews/picture?picId=653163855

 

こうした対立は、パッタニー県に限らず、首都バンコクでもテロを引き起こしかねないのである。バンコクの地下鉄でセキュリティチェックが入るのもテロを考えての事であると言えるだろう。

詳しくは下記記事を参考に。

Islamic terrorism ISISタイにおけるイスラムとテロ
イスラム過激派組織・イスラム国の兵士 タイの深南部三県の1つであるパッタニー県とその周辺は14世紀から19世紀にかけてパタニ王国という半独立の王朝があった。しかし、20世紀初頭タイが大英帝国と...

上記記事でも述べているが、最近何かと騒がせている「イスラム国」とは直接的な繋がりはない。

ニュースではイスラム国の構成員がタイへと入国したと報じられたが、2015年のクリスマスや年末の大きなイベント時も特に動きは無かった。テロを起こすなら入国してから比較的早い段階かと思う。この件についてはそこまで気にする必要は無いだろう。

 

タイのギャング

パタヤの窃盗団
パタヤのギャング(窃盗団) http://www.pattayadailynews.com/en/2010/03/31/pattaya-police-arrest-thieving-gang-of-thai-youths/

 

タイで不良少年たちは「ナック・レン」と呼ばれる。
ナック・レンは様々な非行少年少女の総称だ。
「ギャング」とも呼ばれるが、ナック・レンと同義である場合と、厳密には徒党を組んで暴力沙汰を起こすという狭義がある。

ギャングには2種類いて、マフィアの下部組織としてや独立集団として非合法活動をするグループと友達などと集まり、度胸試しや自分の男らしさを誇示する程度の遊びの延長線上のグループになる。

麻薬などが絡んだグループから足を洗うのは大変というように、前者のグループがより危険である。

ジーダイアリー9月号 「ギャングたちの青春」より

タイのこうしたギャングは必ずと言っていいほど武器を持参している。タイでは拳銃が所持が合法的にも認められる事もあり比較的入手しやすい。そのため、こうしたギャング同士の抗争では拳銃による死者が多数出ている。

 

ギャングを構成するのはほとんどが20代までの若者で、こうした人々が、社会などに対して不満を感じ反社会的な行動をするのはどこの国でもあることである。従って、これを防ぐことは難しい。

ただ、タイの場合、こうした若者が簡単に銃を所持出来るという危険性がある。

 

ちなみに、現在タイはクーデターにより国軍が治安維持にもあたっているため、こうした抗争は以前より少なくなっている。

 

タイにおける日本のヤクザ

ヤクザ
http://qz.com/29270/when-the-yakuza-come-calling-one-in-five-japanese-companies-admit-to-paying-them-off/

タイ国内では、「日本人が日本人を騙す」といった事件も多々発生している。多くが詐欺事件や賭博といった賭け事が絡んだ事件である。

 

タイには多くの日本人が住んでいることが知られているが、その中には日本で暴力団に所属しており、何らかの理由で日本には戻れない人が数多く存在している。そうした人が中心となり、日本人をターゲットに金銭をだまし取る詐欺事件や野球賭博をはじめとするギャンブル、地下カジノの経営、薬物取引がなされている。

薬物取引については2015年10月にも日本人の暴力団関係者がバンコク警察に捕まり、逮捕されている。

タイの警察当局、覚せい剤と銃の所持容疑で日本人の男4人を逮捕

 

また、こうした表面上違法性がわかりやすい事業の他、不動産取引や旅行代理店の分野においても日本のヤクザが絡んでいるケースがある。異国の地では日本人というだけで親しみを感じ行動を共にすることも多いが、お金が動く場合、それが特に大きなお金の場合は十分に注意する必要があるだろう。

 

タクシン派と反タクシン派のデモ

タイではタクシン支持派と反タクシン派の政治的な対立があり、近年(2014年5月)もこれを原因とするデモやクーデターが発生している。デモ隊に向けて爆発物を投げ込んだり、デモの鎮圧によって死傷者が出ており、旅行者として行く場合にはこうした現場には近寄らない方が良いだろう。

 

クーデターの最終目的はタクシン派の排除であるが(詳しくはタイでクーデターが起こった理由の記事を参考に。)、現在はそれには触れず酒、タバコの販売等の規制強化が行われている。

今後民政へ移行する前にこうした規制が再度なされる可能性があり、その際には治安悪化の懸念もあるだろう。

 

ただ、政治が未熟で政策も人気取りのポピュリズムが主流なタイでは、規制強化はクーデター時ぐらいしか望めない。クーデター中の現在は目立った政治抗争も無く、治安も比較的良いので、この間に銃規制等進めてほしいものである。

デモに関してはタイでデモが起こる理由をわかりやすく説明するの記事を参考に。

 

タイ旅行時の観光は注意も必要

以上がタイでの治安を語る上で自分なりにまとめてみた重要なポイントである。海外では通常の日本で起こり得ないような犯罪が数多く存在しているのは確かだ。タイもその例外ではなく、拳銃の入手の容易さが日本にはない凶悪事件も引き起こしている。

 

ただ、タイで日本人が殺されるといった重大事件に巻き込まれるケースは旅行者の数から見ても非常に少ないのは確かである。そういった意味では比較的治安は良好と言える。それでも、スリや詐欺等の軽犯罪は数多く発生しているので、タイにいる時は日本ではないという認識をきちんと持って、トラブルには日本にいる時以上に気を付けなければならない。

 

タイ旅行時怪我や病気だけでなく盗難の保証もなされるので海外旅行保険への加入は必須である。海外旅行保険に関しては下記記事を参考に。

Thai Baht and bank cardクレジットカードに付帯している海外旅行保険の使い方。海外で病気、事故、盗難にあう前に絶対知っておこう!
 海外旅行保険海外旅行保険は、病気やケガの治療の際かかった費用はもちろん、持ち物の損害や旅先でおこり得るリスクを包括的に補償してくれる保険である。留学やバックパックなどの長期滞在の際はもちろん...
海外旅行保険は無料のものもたくさんあるので、めんどくさがらずに必ず加入するようにしよう。



Gang of Thailand

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


ABOUTこの記事をかいた人

付利意雷布亜

サラリーマンからニートになり、日雇いバイト、フリーターをしばらく続けた後、アフィリエイトで稼げるようになり個人事業主へ。 現在は日本を拠点に、年3分の1以上はタイを中心とする海外のホテルで生活しています。