タイ・バンコクのテロに関する情報。テロを起こした犯人グループとは?

Suspect-of-Bangkok-terrorism
今回のテロ事件で大きく拡散したエラワン廟での爆発テロ実行犯とされる男の似顔絵

 

バンコクにおけるテロ

エラワン廟での爆発テロ

2015年8月17日夜、タイの首都バンコクのラチャプラソン交差点・エラワン廟(びょう)構内で爆発が起こった。爆発は祠(ほこら)の外縁のベンチの下に置かれていた3kgのTNTが詰め込まれたパイプにより引き起こされた。

この爆発による死者は20人で死者はタイ人の他、中国人、フィリピン人、マレーシア人の8名を含んでいる。負傷者は130人で1人の日本人も腹部に重傷を負い、一時意識不明の重体でっあったが、現在は意識も回復している。

 

このエリアは交通量や歩行者も多く、死者の多くがエラワン廟に訪れていた人々の他、周りにいた歩行者、バイクの運転手だと思われる。

after Bangkok terrorism explosion
爆発直後の写真。散乱するバイク。

 

場所は下記Google Mapsの位置で見える歩道に近い道路上。右のエラワン廟には多くのタイ人や外国人観光客で賑わっているため、このような大きな被害をもたらしたと思われる。


高級ホテルのグランド・ハイアット前で伊勢丹バンコク店にも近く、日本人観光客も多数訪れる。

 

サトーン船着場での爆発テロ

最初の爆発が起きた翌日、8月18日13時20分にはBTSサパーンタクシン駅近くサトーン船着場でも爆発物による爆発が起きた。上を走る道路から落とされた爆弾は地面にぶつかり、跳ね返って海へと落下したため幸い死傷者は出なかった。

 

バンコクのテロで使われた爆弾

8月17日、18日のテロで使われた爆弾はともにボールベアリングTNT爆弾と呼ばれるのもである。殺傷能力を高めるため、爆発と同時に、多数の鉄球が放出されるような仕組みになっている。

Ball bearings bomb
サトーン船着場に落ちていた鉄球。これに当たれば銃で撃たれるのとほぼ同じダメージを受ける。

1人の現地在住日本人は腹部にこの鉄球を受け、内臓を損傷したことにより出血が止まらず、重傷を負った。

 

バンコクでテロの起きた場所

Jpeg
サトーン船着場では爆発事件が起こった翌日、水底に沈む爆弾片の回収作業が行われていた。

 

エラワン廟もサトーン船着場も、バンコク・スカイトレイン(BTS)沿線沿いにある。エラワン廟はBTSチットロム駅とサイアム駅の間で日系デパート伊勢丹にも近い。サトーン船着場はサパーン・タクシン駅の近くにある。

 

爆発テロの起こった詳しい場所は下記のGoogle Mapsを参考に(地図上の赤いチェック2地点)。


右上の枠の記号(拡大地図を表示)をクリックして拡大で表示すると見やすくなる。

 

Phra Phrom (Erawan Shrine)
多くの人で賑わうエラワン廟(Erawan Shrineより)

 

エラワン廟のあるラチャプラソン交差点や伊勢丹前では、2014年2月の反政府デモ中にも爆発が起こり、2名の子供が亡くなっている。このエリアは有事には近づかない方が良いだろう。

参考:デモ、非常事態宣言下のタイで起こった様々な出来事

 

バンコクのテロの犯人は?

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タイ警察が公開したエラワン廟爆破・容疑者(黄色シャツの男)の似顔絵。

 

エラワン廟、サトーン船着場ともに同じボールベアリング爆弾が使われている。この手の爆弾は中東のテロ組織が自爆テロで用いるものと同じものされている。

また、エラワン廟近くに設置されていた防犯カメラには黄色のTシャツを着た中東系の男がリュックを置いて立ち去っている様子が写されており、タイ警察はこの男の似顔絵(上記)を公開し、逮捕状の発行をしている。

Man of the yellow T-shirt
エラワン廟前でリュックを置き去る男。黄色Tシャツの男が現れた後場所を譲る赤Tシャツの男も共犯とマークされている。

 

サトーン船着場で起こった第二のテロでも容疑者と思われる男性が防犯カメラに写っていた。

Tha Sathorn Bombers
スマートフォンのようなものを操作する容疑者(手前にいる青色Tシャツの男)。

現在もタイ警察は上記爆破の実行犯である黄色Tシャツの男、赤Tシャツ、青色Tシャツの男の行方を追っている。

 

2人のテロ容疑者の逮捕

2015年8月29日、タイ警察はバンコクの爆弾テロ事件に関わったとされるアデム・カラダク(Adem Karadag)容疑者(28歳)をバンコクのノン・チョック(Nong Chok)区のアパートで拘束した。

Bangkok terrorist Adem Karadag
アデム・カラダク(Adem Karadag)容疑者

 

タイ警察はエラワン廟エリアの携帯通信記録をチェックし、3つのトルコからの国際ローミング番号を見つけ、ノン・チョックの居場所を突き止めたとの事である(ただ、アパートのオーナーが怪しいトルコ人がいると警察に通報し逮捕に繋がるという報道もなされているため、タイ警察が手柄を横取りしたとの指摘も)。

アデム容疑者の部屋からは今回使われた爆弾の材料や作成のための工具が見つかっている。

 

警察関係者はエラワン廟爆破実行犯(黄色Tシャツ)の男とサトーン船着場爆破実行犯(青色Tシャツ)の男はすでに国外脱出済で、逮捕されたアデム容疑者はパスポートに問題があり国外退去に踏みきれなかったと見ている。(電話記録により爆破犯の逮捕に繋がる(Phone data leads to bomb arrest)より)

取り調べに対しアデム容疑者は、マレーシアで働くために一時的に不法入国した「トルコ人」だと語り、事件への関与を否定している。(トルコ人容疑者、エラワン廟爆破事件への関与を否定(Turkish Suspect Denies Involvement in Erawan Bomb Attack www.khaosodenglish.com)より)

 

また、2015年9月1日には、エラワン廟爆破の実行犯とされるユスフ・ミーライリー(Yusufu Mierili)容疑者をタイとカンボジアの国境付近でタイ警察が拘束している。

Bangkok terrorist Yusufu Mierili
ユスフ・ミーライリー(Yusufu Mierili)容疑者

 

ユスフ容疑者は先に逮捕されたアデム容疑者と同様に、中国で東トルキスタン独立運動(無差別殺傷事件などのテロ事件も含む)を繰り返しているトルコ系少数民族のウイグル族とされ、国籍は「中国」である。ユスフ容疑者は中国の大学で化学工学の学位も取得し、エラワン廟爆破当日はバンコクのファランポーン駅で黄Tシャツ男に自身が作った爆弾を渡し、遠隔操作で爆発させた疑いが持たれている(つまり、黄色Tシャツの男とは別の男)。

アデム容疑者の部屋にあった爆弾材料の容器にはユスフ容疑者の指紋が付着していたという。

 

ユスフ容疑者の供述によると、「イサン」と呼ばれる男(アブドラフマン・アブドサタール容疑者)から指示を受けてテロを実行したとの事で、この男がテロの首謀者である可能性が浮上している。イサンもウイグル族で、携帯アプリで黄色Tシャツの男らに指示を出していたという。

イサンは爆破前日にタイから中国へ出国、その後バングラデシュを経由し、8月30日にはイスタンブール(トルコ)に潜伏しているとして、9月12日タイ警察は国際刑事警察機構(ICPO)を通じ国際手配している(ユスフ・若き中国人の爆破テロ首謀者(’ยูซูฟู’ซัดทอด หนุ่มสัญชาติจีนบงการระเบิด)より)。

 

タイ警察は今回のバンコクにおけるテロ事件で計12人の逮捕状を取り捜査を進めている。

この中にはトルコ人男性と結婚したタイ人女性・ワンナ・スワンサン容疑者(26)も含まれている。ワンナ容疑者はテロ資金の送金ため、名義を貸して口座の提供を行った疑いが持たれている。

彼女は現在もトルコに滞在しており関与を否定、警察への出頭を拒んでいる。


タイ人女性ワンナ・スワンサン容疑者はテレビのインタビューでテロへの関与を否定している(タイ語)。

 

テロの動機

首謀者とされる「イサン」ことアブドラフマン・アブドサタール容疑者もウイグル族と判明し、今回の一連のテロはウイグル族を中国に強制送還したタイ軍事政権への報復との見方が強まっている。

国際社会、タイ軍事政権を非難 ウイグル族を中国に強制送還

タイ軍事政権が中国新疆ウイグル自治区から逃れてきたトルコ系イスラム教徒ウイグル族の一部を中国に強制送還したことに、国際社会から非難が集まっている。(中略)
タイ政府は7月8日夜にウイグル族109人を中国に送還した。密入国者として昨年拘束したウイグル族の一部で、タイ政府は「中国政府からの証拠に基づき中国国籍を確認した」としている。これに対し国際機関や人権団体から批判が噴出した。(中略)
タイのプラユット暫定首相は10日「中国政府は人々の身の安全を保証した。タイ政府や国際機関が人を派遣して彼らの安全を確認することも認めた」などと述べ、理解を求めた。タイ政府によると国籍が確認できていない約60人のウイグル族がなお残っており、その処遇が焦点となる。
トルコでは8日夜、今回の強制送還に抗議する人々がイスタンブールにあるタイ領事館を襲撃し、窓ガラスが割られるなどの被害が出た。トルコ政府も9日「タイ政府の行動を遺憾に思う」とする声明を出した。

中国側は強制送還中のウイグル族の頭に(まるで犯罪者を移送するように)布袋被せた。そして、中国に移送された後、彼らの行方はわからなくなっている。

中国側が強制送還中のウイグル族の頭に布袋被せたことをタイ側が釈明より

多くのウイグル族が中国での弾圧を逃れ、タイを経由しトルコに亡命しているとされている。中国では「ウイグル族はイスラム教徒のテロリスト」とされ、新疆ウイグル自治区では当初95%を占めていたウイグル族も、今では45%まで減少している。

漢民族との対立が続いており、中国での生活をあきらめトルコに向かうウイグル族も多い。

 

エラワン廟爆破の実行犯・ユスフ容疑者も中国に送還されるよりタイで裁かれることを希望している(ユスフ容疑者はエラワン廟の爆弾設置犯へ爆弾入りバックを渡したと自供(Suspect confesses to delivering bag to shrine bomber, police say)より。)

 

7月の強制送還は中国政府からの要請にタイ政府が応じたものであったが、駐タイ中国大使館はこの頃から報復テロを警戒していた。

今回のテロは中国人観光客が多いバンコクの中華街やアジアティークも標的になっていた(特に2度目の爆破はアジアンティークを当初狙っていた)とされる。

 

ソムヨット警察長官も9月15日の記者会見で、7月にウイグル族109人を中国に強制送還した軍政への反発が事件の動機になった可能性に言及した。

ただ、プラユット暫定首相は警察長官の発言(ウイグル族109人を中国に強制送還した軍政への反発が事件の動機になった可能性への言及)を否定し、ソムヨット警察長官も翌9月16日には密入国者の取り締まりを強化したことで、犯行グループのビジネスが立ち行かなくなり、タイが恨みの標的になったとして強制送還がテロの引き金になった事を否定している。


次の日に発言が変わったタイ警察長官。

 

このように警察庁長官が発言を変えたのは、ウイグル族の強制送還がテロを招いたとすれば、現軍政の中国寄りの政治判断への批判につながりかねず、当局からの圧力があったからだろう。

 

現政権はクーデターによる軍政だが国民の世論は無視できず、民政移管を前にマイナスを避けたいと考えている。今も軍政による情報統制は続いているが、残りの指名手配犯の逮捕と「真実」がタイ当局から発表される事を祈りたいと思う。

 

※新たな情報が分かり次第追記します。

 

タイ国内におけるその他テロ組織について

当初から犯行が疑われた組織としてウイグル族強制送還に対するウイグル系民族もしくは中東テロ組織で構成される「国際テロ組織」以外にも

 

▶ タイ南部で独立運動を繰り広げているマレー系の「イスラム過激派」

▶ 現軍政に反対するタイ国軍内部の不満分子、タクシン派(赤服)とも呼ばれる「反政府組織」

の2つがあった。両者はタイ人グループによるテロ組織である。

 

今回のテロ事件にかんして後者のタクシン派(赤服)とも呼ばれる「反政府組織」は当初から関与を否定し、犯人逮捕への協力と懸賞金の積み上げをしている。

 

タイ南部のイスラム過激派にかんしては下記記事

タイにおけるイスラムとテロ
タイ人は95%が仏教であるとされ、4%がイスラム教徒となっている。タイのイスラム教徒はパタニ領のあった深南部三県と呼ばれる地域に集中している。ここに住むマレー系住民はタイ人(タイ国籍)ながらもほぼすべてがイスラム教徒である。

 

タクシン派にかんしては下記記事を参考に

タイでデモが起こる理由をわかりやすく説明する。バンコク・デモの最近の情勢。
タイで反政府デモが起こるのはタクシン・チナワットという人物が首相になったことから始まる。この記事では「タイでデモが起こる理由」を簡潔にまとめると共に、タイへの渡航が近い人などタイの情勢が気になっている人のために、タイのデモに関する最新情報についても詳しくまとめて考察していきたいと思う。

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