タイにおけるイスラムとテロ

Islamic terrorism ISIS
イスラム過激派組織・イスラム国の兵士

 

タイの深南部三県の1つであるパッタニー県とその周辺は14世紀から19世紀にかけてパタニ王国という半独立の王朝があった。しかし、20世紀初頭タイが大英帝国との間に結んだバンコク条約により、パタニ領のタイ領化が国際的に承認され、タイへと編入される事になる。イスラム教徒であるマレー系民族が多く住みながらも、タイの一部となったのだ。

 

タイにおけるイスラム

タイ人は95%が仏教であるとされ、4%がイスラム教徒となっている。タイのイスラム教徒はパタニ領のあった深南部三県と呼ばれる地域に集中している。ここに住むマレー系住民はタイ人(タイ国籍)ながらもほぼすべてがイスラム教徒である。

 

タイにおけるイスラム過激派のテロ

タイ南部のパッタニー県におけるテロ事件

タイの国家としてはこうした少数派の宗教に配慮して国教を定めていないが、20世紀に入ってからこうしたマレー系住民の多い深南部三県でイスラム過激派による独立運動が繰り広げられてきた。特に2001年からスタートしたタクシン政権下では厳しい締め付けが行われ、分離派武装勢力の爆弾や銃撃テロも頻発するようになる。2004年には大きな衝突も起き、2004年からこれまでに両者合わせて約6000人の死者を出している。

現在も深南部では爆弾テロや軍や警察車両を狙った襲撃事件が多発しているため、渡航は十分に注意した方が良いだろう。

バンコクと深南部三県(パッターニー県・ヤラー県・ナラーティワート県)
バンコクと深南部三県(パッターニー県・ヤラー県・ナラーティワート県)の場所。マレーシアとの国境近くにある。マレーシアへ陸路で向かう場合等、このエリアへ渡航する際には十分に注意してほしい。

 

バンコクにおけるテロ事件

Suspect-of-Bangkok-terrorism
バンコク爆破テロ、実行犯の似顔絵

 

こうしたタイ国内での独立運動とは別に2015年8月17日、18日バンコクではイスラム過激派による爆弾テロ事件が起こっている。死者は20人で1人の日本人も重傷を負った。

テロを起こしたとされる犯人はすでに拘束され、中国の少数民族・ウイグル族によるものとの見方が強まっている。ウイグル族はイスラム過激派として中国でも東トルキスタン独立運動(無差別殺傷事件などのテロ事件も含む)を繰り返しており、バンコクにおけるテロは、タイへ逃げて来たウイグル族を中国に強制送還したタイ軍事政権への報復との見方が強い。

詳しくは下記記事を参考に。

タイ・バンコクのテロに関する情報。テロを起こした犯人グループとは?
2015年8月17日夜、タイの首都バンコクのラチャプラソン交差点・エラワン廟構内で爆発が起こった。爆発は祠(ほこら)の外縁のベンチの下に置かれていた3kgのTNTが詰め込まれたパイプにより引き起こされた。翌日、8月18日13時20分にもBTSサパーンタクシン駅近くサトーン船着場でも爆発物による爆発が起きている。

南部のイスラム過激派とは直接的な繋がりは無いとされる。ただ、仏教徒の多いタイにおいてもこうしたイスラム過激派に悩まされている現状がある。

 

タイにおけるイスラム国(IS)

バンコクのテロ事件は、今年の1月に日本人である湯川遥菜氏、後藤健二氏の人質事件が大きな話題となった事からイスラム国によるものと勘違いしている人は多い。

上記でも述べたように、タイ南部におけるイスラム過激派のテロはマレー系民族によるもので、8月のバンコクで起こったイスラム過激派によるテロは中国の少数民族であるウイグル族によるものである。両者とイスラム国との繋がりは無いとされる。ただし、断言は出来ない。

 

実際タイに近いインドネシアから700人がイスラム国へ戦闘員として加わったとの発言がインドネシアのルフット・パンジャイタン政治・法務・治安調整相からなされており、東南アジアでもイスラム国の影が広がっているかもしれない。

 

イスラム過激派によるテロ事件に巻き込まれないようにするには?

2001年9月11日アメリカのニューヨークで起きた同時多発テロ事件では3025人の人が亡くなり、6291人以上の負傷者を出した。このテロ事件を起こしたのはイスラム過激派組織アルカイダだった。

2015年11月13日フランスのパリとサン=ドニにおいて、銃撃と爆発が同時多発的に発生し、130人以上が死亡したのは記憶に新しいかと思う。このテロはイスラム過激派組織・イスラム国が犯行声明を出している。

 

名前は違えど、イスラム過激派は独立や開放を目的としたテロ以外にも、報復として世界で多くのテロ事件を起こしている。まさにテロをグローバル化させているわけで、この脅威はタイに限らず日本へも及んでいると考えて良いだろう。

タイや中国の様に少数派を力で押し潰そうとすれば無差別的にテロを起こす可能性があるわけで、アメリカの9.11から14年経った今でもこれを止める事が出来ていない。

 

それでもテロが起きている国や地域というのは、大義名分のもとある程度限定されている。バンコクにおけるテロも、ウイグル族の強制送還がなされた後は、こうした懸念が表明されていた。

国家として攻撃されるような理由を作らざるを得ないのであれば、我々一個人はしっかりと情報を収集しなければならない。懸念事項が起きた際には、攻撃の対象となりそうな国や地域への渡航は避けるべきである。

現状こうすることでしか、テロに巻き込まれないようにする方策はないだろう。

 

タイの治安に関しては下記記事も参考に。

タイの治安について、日本人が巻き込まれる犯罪やタイ特有の事情まで詳しく述べていく
タイ特有の犯罪や事件については「イスラム過激派によるテロ」「ギャング」「タクシン派と反タクシン派の対立」の3つがあり、治安に大きな影響を与えている。しかし、日本人が巻き込まれ易いのは軽犯罪である。その多くが詐欺や窃盗だ。バンコクでは「見せ金詐欺」や「いかさま賭博」、「抱きつきスリ」等の被害が何度か報告されている。

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