ご存知の通り、先日タイではタイ国軍によるクーデターが発表された。ニュースでは、日本国民の一番の懸念材料部分であり自分たちも関わりあり得る、タイ在留邦人の様子や安否の他にも、空港の様子が報じられている。
毎年タイは人気の海外旅行先で、近日中のタイ渡航を予定している人も多く、予約した航空券やホテルをキャンセルするのは勿体無いと思う人もいるだろう。タイへの旅行を楽しみに過ごしていた人もいるだろうし、少し前のバンコクにおけるデモ時と同様、タイの情勢が多少悪化しても渡航したいと考える人も多い。
現状安全とは言えない中で、タイへの渡航はあまりおすすめしない。それでも、タイへ予定通り渡航する場合は、トラブルを想定した対策を練っておいた方が良いだろう。
そこで今回はタイ情勢における最悪の状況下、空港が封鎖されるという中で、タイ国外へ脱出する場合、どの方法が最良の方法か紹介していきたいと思う。
クーデター・デモで飛行機が飛ばない、空港が閉鎖
実は、以前のタクシン派と反タクシン派による対立では、タイの主要空港であるスワンナプーム国際空港、ドンムアン空港が占拠され、空路での移動が制限された事が実際にあった。
2008年11月25日、反タクシン派は「ヒロシマ作戦」と称し公営バスや、首相府占拠後に政府の臨時庁舎となっていたスワンナプーム国際空港、ドンムアン空港を包囲、占拠した。
空路でのタイ国外脱出
上記のようなバンコク周辺の主要空港が閉鎖されるようなことはあっても、タイ国内の全空港が使えなくなるということは少ないと思う。
バンコクに滞在中そのような自体に見舞われたら、陸路で比較的国外への運航便の多いプーケット、チェンマイを目指し、そこから空路で国外へ出るという手段がもっとも現実的だろう。
陸路でのタイ国外脱出
しかし、予想以上に今回タイでのクーデターが悪化し、タイ国内の全ての空路が封鎖されるという最悪の状態になった場合、空路・海路による国外脱出よりも陸路による隣国への脱出がより現実的になる。
下記Google Mapsを見てもらうとわかると思うが、タイは西をミャンマー、東をカンボジア、ラオス、南はマレーシアに接している。
マップ上では見えないが、南部の細い部分はマレーシアと繋がっている
タイ国内で騒乱が起こった場合、これら国境へ向かうことになるが、そうした状況下で日本人が入国を拒否されるようなことはないと思う。
これら隣国は非常に親日的な国でもあるし、パスポートさえ持参し日本人と区別出来れば相当なタイの難民が国境付近に押し寄せない限りは容易に出国できるだろう。
タイ旅行に行けば相当最悪な事態にならない限りは隣国へ脱出後、第三国から日本へ帰国する事が出来る。
クーデター中もタイへの渡航を検討している人は数日間は余裕を持ってスケジュールを組んでおけば安心だ。
ただし、この陸路による脱出も注意点がいくつかあるため下記でそれを紹介したいと思う。
ラオスへの入国
ラオスへは2007年よりビザが免除され、ビザ無しでの入国が可能である。
ただし、免除には以下の条件が付く
- 日本国籍(有効な日本のパスポートを所持している)
- 滞在日数が15日以内
- ラオス入国時にパスポートの残存有効期間が6ヶ月以上
特に最後の残存有効期間に関しては見落としやすく、かつ他の国でもよく言われるところなので、頻繁に旅行する人は早めに更新した方が良いだろう。
マレーシアとの国境近く、タイ南部のイスラム過激派
タイ南部では、タイからの分離独立を求めるイスラム過激派によるテロが相次いでおり、2004年以降、分離派武装勢力の爆弾や銃撃テロよって、これまでに約5500人が死亡している。
詳しくはタイでのイスラム過激派によるテロ事件の記事を参考に。
日本ではほとんど知られていないが、このテロ行為による死傷者数は、タクシン派と反タクシン派のデモやクーデターによるものと比べ物にならないほど多い。
マレーシアの国境に近いパッターニー県を中心としたタイの南部を上記のようなタイの国内情勢が不安定な時に通過することは、バンコクやタクシン派の多いタイ北部よりもさらなる危険を伴う。
従って、こうした情勢の時に陸路でのマレーシアへの脱出は避けた方が良いだろう。
ベトナムの反中感情
タイへの外国人渡航者数ランキングがある。
2012年のタイへの旅行者が多い国別のランキングとして
1位 中国 278万9354人
2位 マレーシア 256万963人
3位 日本 137万1253人
となっており、中国人の数は日本人の倍以上となっている。
そのためタイ国内で騒乱が生じた場合、日本人同様に多数の中国人も同じような動きを見せると考えられる。
つまり、日本人が移動するところには必ず中国人がいると言っても過言ではないだろう。
そんな多数の中国人と共にベトナムへ押し寄せたらどうなるだろうか?
昨今のニュースでもあるように、ベトナムは南沙諸島をめぐる領土問題で中国と大きく対立しており、ベトナム国内の反中デモは中国における反日デモレベル以上に危険な状態で多数の死傷者が出ている。
ベトナム中部で反中デモ暴徒化、20人以上が死亡=病院関係者
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DV06120140515
ベトナム デモの中国人死者5人に
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140519/k10014553991000.html
こうした状況下で多数の中国人とともにベトナムへ押し寄せれば入国自体が危ぶまれる可能性も否定出来ないだろう。
現在ベトナムにおける反中デモは収束しつつあり、今後は特に影響も無くなっていくと思うが、現状ではベトナムルートも避けた方が無難である。
カンボジア、ミャンマーへの入国
日本国籍を持つものは
ベトナムはノービザで15日間の滞在が可能
ラオスはノービザで15日間の滞在が可能
マレーシアはノービザで90日間の滞在が可能
となっており、容易に入国出来るだけに、上記ルートでの国外脱出を検討する人は多い。
現在の情勢を考えれば、ラオスへ出国したほうが安全なように思える。
ただ、滞在場所によってはカンボジアやミャンマーの方が近い。
カンボジアとミャンマーへ入国するにはビザが必要になる。
ビザはタイ国内のカンボジア・ミャンマー大使館や国境付近、日本国内の大使館で取得する必要がある。
もし、陸路で脱出しなければならないぐらいタイの情勢が悪くなっていたら、タイの大使館や国境付近でのビザ取得は非常に時間がかかる可能性が高い。
ミャンマーへのビザ発行に関しては、即日発行で少し高めのビザでも翌日になることがあるため、ミャンマーへの出国を考えている場合は予め日本でビザを取得しておいたほうが良いだろう。
カンボジアではタイとの国境付近でもビザを発行する事ができ、普段なら数分でアライバルビザを取得できるがタイ国内情勢が安定していない状態では大混雑が予想される。
両者とも日本国内で取得しておいたほうがスムーズに出国できるだろう。
ビザの発行時に必要なもの
タイでカンボジア・ミャンマーのビザを発行する場合、必要になるものは
- ビザ申請書(発行場所に置いてある事が多い)
- パスポート
- パスポートコピー
- 顔写真
- 航空券のコピー
- 申請料(1000B程度)
パスポートのコピー、顔写真は2枚ずつ用意しておく必要がある。
念のためもっと用意しておいてもいいかもしれない。
申請料も1000Bとしたが、カンボジアはもっと安い。
クーデターが悪化した場合の対処
安い長距離バスだけでなく、ミニバスも含めれば様々な方法で国境付近へ向かう事が出来る。
ただタイ国内の全ての空港が使えなくなり、陸路でタイ国外へ脱出する必要性が生じた場合、自分がバンコクにいるならカオサンロードへ迷わず向かうと思う。
カオサンロードへ向かう理由
カオサンロードへ向かう理由はいくつかある。
- 欧米人を多数とし、日本人をはじめとした外国人も多く、彼らに紛れて国外へ出ることが出来る。
- 多数の外国人がいるため、外国人にとって有益な情報が多く集まる。
- 普段からタイの国境付近へ向かうツアーが組まれており、騒乱の中でも比較的安価で国境へ向かえる可能性が高い。
などである。
特に、有益な情報が集まるという点は安全面から非常に大きいだろう。
タイの情勢が悪化した場合の対処法まとめ
とにかく、タイ国内情勢が悪化し、タイ国内の全ての空港からの出国が制限された場合は、隣国を経由した第3国からの出国が必要になる。このような状況になる可能性は現時点では非常に低いとはいえ、もしものために上記情報をきちんと頭に入れておいて損はないだろう。
もし、タイからの空路による出国を制限された場合も、タイ旅行へ行く人の多くが仕事を持つ会社員や社会人であり、なるべく早い手段で日本へ帰国しなければならない。心配であれば、タイへの渡航スケジュールを短くし余裕のある日程にしたり、上でも提案した日本国内で隣国へのビザを予め取得した上でタイ旅行へ向かうのが良いかもいれない。
タイのクーデターについて詳しくは下記記事を参考に。

コメント
2008年と同じくバンコクの両空港の閉鎖のみならば、陸路ではなくプーケットやチェンマイ等の地方にある国際空港に向かうのがベターかと。
記事のように全空路が閉鎖される事態まで、タイ国内にいる人間(特に観光客)は極少数に思われます。
封鎖が前回同様スワンナプームとドンムアンだけで、バンコク周辺にいるのであれば、陸路でプーケット、チェンマイに行きそこから出国という手段がもっとも簡易ではありますね。
4月の水掛まつりは、和気藹々といった感じだったのに残念です。。。